ポストイットとラインマーカー

わなび学生による漫画、アニメ、日常中心の覚書ブログ。短歌も1日1首載せています

11/26(火)持つと重たくなるものなあんだ?

  •  はぐれもの
  • 黙々食す
  • カーネルの
  • 鳥の包みの
  • 「Family」滲む
 
 
 
 今日は就活を控えた10余年来の友人に誘われて、久々に一緒に飲みに行った。バイトが終わった午後8時、大学近くの最寄り駅で集合し、ラーメンで小腹を満たしてから安い呑み屋へ
 
 
2人で店への道を歩いていると、向かい側から母親らしき女性と幼い男の子が並んで歩いてきた。男の子の方は、幼稚園高学年くらいかまだ足元が少し覚束ないけれど元気な盛りのようで、前に前に女性を引っ張っている
 
微笑ましいなあと眺めていると、通りすがりに、その子が自信満々の笑顔で女性にこう言うのが聞こえた
 
持つと重たくなるものなあんだ?
 
 
 
 道端で出された思わぬ謎かけに、私達ははっとした。幼子よ、それは一体何ですか
 
しかし、人波にまみれ親子は後ろに後ろに流れていく。私達も足を留める訳には行かず、答えを聞けぬまま目当ての飲み屋へと到着
 
そして生中を片手に再会を喜ぶ乾杯をすると、私達は早速、謎解きにとりかかった
 
 
 
相手は幼子、まさか量子力学か何かを持ってきて難解な謎かけをするわけでもなし。せいぜい簡単な言葉遊びだろう、大人の私達が解けない訳はない
 
けれども、幾ら頭を捻っても答えは出ないのである。「持つ」、「重いもの」、言葉をいくら切り刻んで言い換えても手掛かりがつかめない。そもそも質問が短い上に漠然としすぎているのだ、解けるわけがないじゃないか。いや言い訳はよすんだ、これではもう大人を名乗る資格が無い。そう私達が自暴自棄になりかけた時、突然視界が開け私の頭に啓示が下りた。多分潘恵子の声で、こう聞こえた
 
芭蕉芭蕉聞こえますか……難しく考える事は無い。あなたの心に素直になりなさい、さすれば扉は開かれん
 
 
 
ああ老師……私は啓示に従って呑み屋を見渡し、そして答えを確信した。見れば談笑する男女の群れ。彼らの周りには、消臭剤の宣伝にでも使われていそうな眩しい桃色の障壁が張られていて、彼らがどさくさにまぎれて不用意に接触したり、指を絡めたりするほど拡大し、頼んでもいないのにその啓蒙の光で私達の灰色の世界を駆逐せんとしている
 
そう、答えはこの呑み屋にも溢れているもの、すなわち恋人。持つまでは欲しくてたまらないのに、持つと徐々に重たくなっていき、その愛の力(笑)で周囲を圧倒した後、彼ら自身もその自重で崩壊する。確かに、持つとこれ程重くなるものも世の中にあるまいよ
 
この啓示を共有すると、友人は重々しく頷いて同意してくれた。流石小中高の長年の付き合いは伊達ではない。互いを理解した上での、深い共感であった。なお友人には相手がいるのだが、寛大な私は許している
 
 
 
そして、私達は幼子を讃えた。童子は言葉を持たぬ分真理を知るというが、流石幼きものよ、天晴れだ
 
そうだ、近づくクリスマスに、信じてもいないキリストの誕生日を祝うのにかこつけてここぞとばかりに、そこら中で人目も憚らずいちゃつく恋人達に鬱屈している場合ではない。私達こそ幼子の説く、素晴らしき人間の付き合い方を、人の心の光を世に示さねばならない
 
だからこそ私達は次の事を約束した
 
 
 
今年のクリスマス、私達は福山雅治の『家族になろうよ』を聴きながらケンタッキーのペアパックを食べる。そうして、悲しい独り身を集めて家族になる……家族になるのだ