ポストイットとラインマーカー

わなび学生による漫画、アニメ、日常中心の覚書ブログ。短歌も1日1首載せています

12/5(木)にこにこまーく。にいににも

  • 光あれ
  • 思ひ草咲き
  • 手離るる
  • すさまじきこと
  • 葉落つる間に
 
 
 
 

幼女とにこにこまーくと仲直り

 

 仕事先がバタバタしていた。
お母様が忙しくて構ってあげられず、寂しい幼女はいつにも増して私にベタベタ甘えてくる
可愛いと思う反面、本来の仕事との兼ね合いで突き放さなければならないところもあって私も苦労する
 
終いには、丁度虫の居所が悪かった幼女兄がお菓子のポッキーに関して発した一言で幼女は泣き出し、布団に引きこもってしまった
職務上喧嘩をそのまま放置するわけにもいかない
幼女兄を優しく諭して謝罪に行かせるが、幼女は布団に顔を埋めて身動ぎもしない。うーんやりづらい
 
 
 しかし、救いの神、お母様が用事を終えて帰ってきて状況は一変した
事情を話すと、申し訳なさそうに少し話してきますね、と仰る
暫くして遠くの部屋で「本当!」という幼女の弾んだ声が聞こえる。ああ、親って凄いもんだなあ。子どもを笑顔にする方法を知り尽くしているのか
 
 
 そして、今日の帰り際。幼女が何かを差し出してきた。幼女兄にも渡そうとしている
「にこにこまーく。にいににも」
見ると、フェルトで出来た黄緑色のスマイルマーク。自作なのだろうか、裏がシールになっていて、紙を剥がすと好きなところに貼れるようだ
 
これが幼女なりの仲直りの仕方なのかなあ。スマイルマークからうつったのか自然、笑みがこぼれる
家族を含めて誰かとまともに喧嘩が出来る時間は、案外そう多くない。それは、大人になって諦める事を知り、誰かに期待するのをやめていくのと同時に、きちんとした仲直りをする事も出来なくなるから。だから喧嘩は出来るうちにしたほうがいい。で、その分同じくらい仲直りをした方がいい。
この子がこれから大きくなって、私の年齢に届くまであと10年超はある。この一家と連絡を取りはしても、私はこの子の成長に関わることは出来まい
 
それでも、どんな大人になっても、仲直りの方法だけは忘れないで欲しいなあ
今忙しいから置いといてよ、と言う幼女兄を「直接受け取りなさい」と宥めながら、私はスマートフォンのリンゴマークの上に新しくこのシールを貼った
うん、良い笑顔
 
 
 
閑話休題
 
 
 

ラウンジぼっち飯と不思議なランチタイム

 

 教育学部棟のラウンジは、殆どキャンパス外にあると言える体育棟からキャンパス内に入る通り道にあたる。

ラウンジとお洒落に言っても、教室と教室の間にプラスチック製の丸テーブルと椅子を置いただけの簡素なもの。
学部棟の古臭さとも相まって、人通りのない6限以降にここを通過するととても寂しい。しかし、日の出ているうちはいつ通っても学生団体やサークルの集まりらしき人々で賑わっている。
 
体育棟の本屋に毎日のように通う関係上、私はよくこのラウンジを通るが、昼時などはその混雑が一層増し、なんだか華やかにさえ見えてくるのだから不思議だ
そんなラウンジに今日に限って偶然にも、テーブルが1つ空いていた。
丁度ご飯を食べる場所を探していた、ぼっち飯難民の私が、ここを安息の地と定める事に思い至ったのは、至極当然であろう
 
 
 まずは周囲のチェック。
きょろきょろしている不審者と思われても、ラウンジでぼっち飯をする場合、この行程は絶対に省いてはならない
なぜなら以前別のラウンジで、どうしても席が無いので1人でテーブル席に座って試験の解答案を作成していたら、「とても楽しそうな男女混合の集団」から酷い地上げにあったことがあるからだ……性格が悪いから譲らなかったけれど
 
 1分ほど遠くから眺めていたが、誰も座る様子が無いので安心して席に着く
今日のメニューはパワーとコスパ重視。ペヤングのW盛とタンパク質・野菜分確保のための棒棒鶏サラダ、LUANAほろにがブレンド50円。合わせて、計450円也
まだ若いからと自分を誤魔化しながら購入したが、改めて見るとなかなか身体に悪そうだな。
 
後悔しつつ箸を割ったところで、「あのー、席いいですか」と上から少し訛った声が掛かった。
見るからに暗そうな私に声をかけてくるような人間はそういない
もしや地上げ? 警戒しながら上を見上げると、そこにいたのは優しそうな顔の初老の男性
 
 
 話を聞くと、昼食を食べるために相席をしたいよう。確かに周囲はどの席も談笑する学生で溢れ、座れるような席は1つも無い
同年代の人間を苦手としているだけで、私は人と一緒にいる事が嫌いではないし、お昼だって誰かと一緒に食べた方が断然美味しい。
勿論快諾すると、男性は安心したような顔をして私の真向かいに座る
 
話しかけてもいいものかなあ。焼きそばを啜りながらちらちら横目で覗いていたら、それに気づいたのか相手の方から話しかけてきてくださった
「大学の学年は?」「4年って事は就職活動もう終わったの?」
全て正直に答えると、偶然内定先をご存知だったようで、相手の表情が少しこちらを信頼したものに変わる。
 
ここぞとばかりにこちらも質問。私達のランチタイムが始まった
 
 
 
 仮名Iさんは中部地方在住の方
お友達の紹介で、古武術の公開講座にわざわざいらしたそう。出身は関西で、仕事を始めてから40年あまり今の住所に住んでいるのだとか。
勉強熱心ですね、と素直に感想を伝えると、「昔勉強しなかった分、現役を退いてから勉強したくなったんですわ」と教えてくれた
 
「最初は無料の放送大学を受けてたの」Iさんは言う
「でも真面目に頑張って受けられるのは一週間くらい。やっぱり試験があるって思わないと勉強できないね」
で、そんなこんなでつい先日放送大学に入学したのだとか。今は解剖に興味があるらしい。とてもアクティブだ
 
最近は少子高齢化で、大学も上位私大以外は定員割れで経営が厳しくなっている。だからこそ、積極的に生涯教育の分野を拡充させ、お金を持っている高齢者を取り込もうという私大が多い。
そういう動きに対して私は今まで、「大学をカルチャーセンターにするのってどうなんだ」とネガティブな考えを持っていた
しかし、実際に学びたがっている方々を目の前にしてみると、自分の無知蒙昧さと失礼さが際立つ。この方々のほうが、現役の若者の学生であるはずの私よりも余程学びに貪欲だ。学生を名乗るのが恥ずかしくなった
  
 
 その後私の内定先の事業について話が移った。
先進国全体で高齢化が進む中で、異業種間参入は絶対に必要。競合企業の具体的な取り組みも例に挙げながら、Iさんは「高齢者」としてのIさん自身の視点から必要なサービスを丁寧に説明してくださった
また、初任地に関しても、お金がある人間と無い人間が集まり、関東関西の中間として文化が混じり合う場として中部地方は勉強になるからお勧めだよ、と教えてくださった
 
 この時、Iさんの口から出て一番予想外だった言葉がこれ
「ちょっとネットで調べれば出てくることだよ。最近は折角便利な検索機能があるんだから、簡単な情報に位なら利用しなきゃ駄目でしょう」
 
確かに全くその通りで、情報の正確性等は兎も角、私達IT世代は情報に対するアクセシビリティが非常に高いはずの存在だ。
それなのに50代でやっとインターネットが普及した世代の方に、しかも自分の内定先に関して知らない情報を提示されながらこんな事を指摘されるなんて
上の世代に対して、失礼ながら「ネットなんか使わず本を読め」が口癖という固定観念を持っていた私は、先ほどに続いてただただ自分を恥じるしかなかった 
 
 
 
 そんなこんなで、談笑に興じていると、あっという間に楽しい時間も終わりが近づいてきた
自分の偏見と勉強不足を恥じた私は、この折角の出会いを無為にしないように、勇気を出して名前とメールアドレス、電話番号を載せた紙を用意。自分のふがいない気持ちを正直に伝え、何かお手伝いできる事があったら連絡をと差し上げた
Iさんは笑って財布を探った後、
「昔の栄光に縋る周りの連中が嫌で、名刺をとんと持たなくなってしまって。お渡しできるものはないけれど、私はこういうの大好きだよ。あなたはいい人だもの、絶対成功出来る。頑張ってね」
と言ってくださった。
 
もしかしたら連絡先を渡したのは迷惑だったのかもしれない
褒め言葉は多分お世辞。名前しか知らない方が思いつきで放ったかもしれない言葉
だけれども、いつも通りのつまらない昼下がりに起きたこの出来事は、どんくさい私にとってはとても救いになった
 
 
今日のラウンジは、確かにカナーンだ
 
 
 
追伸
 

大学生のぼっち飯

 余談だが、毎日サークルや研究室に顔を出す訳でもなければ、ぼっち飯はどんな学生も経験する
特に昼時はぼっち飯難民が多く発生する。これは、大抵の大学は昼休憩が1時間しかないからだ
元から友達と同じ授業を取っている、昼以降の授業が空いている(もしくは潰す)のでも無い限り、集まってご飯を食べるのは難しいのである
 
 私の通う某私立大学は、1学年の人数が国立の1学部に匹敵するマンモス大学。
昼時は自然と、大量のぼっち飯難民が発生する
彼らが取れる選択肢は統計を取った訳ではないけれど、ぼっちと親和性の高い順に恐らく次の5つ
 

①便所を利用

→都市伝説だが、電源プラグが個室につき1つついていて確かに見た目環境はマックより良い。私も、ガサガサ音のする個室から口に海苔の付いた学生が出てきたのを一度だけ見たことがある

②大学周辺の飲食店、生協食堂を利用

→値段や列ならびや店内の混雑に耐えられれば問題無し。財布、時間に余裕があればOK

③空き教室を利用

→一度見つければ、基本毎週利用出来る環境。ラウンジのように複数人で利用する人も多いが、ラウンジ程他人との距離が近かったり、特定サークルに牛耳られていたりしないので辛くない

④ラウンジを利用

→慣れれば天国だが、慣れるまで地獄。カウンター席だとしても誰かと横並びにならなければならないし、団体様の騒がしい声を聞かされる拷問が待っている。テーブ席だと、その席を利用したいサークルや特定団体に囲まれて胃の痛い時間を過ごす事になる

⑤そもそも食べない

→大正義。そもそも大学でお昼を食べるべきではない。時間のある時に、誰かと約束して外で食べてこよう