ポストイットとラインマーカー

わなび学生による漫画、アニメ、日常中心の覚書ブログ。短歌も1日1首載せています

12/15(日)やりたい事を見つけろ、自分にあった企業を目指せ。

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 ここのところ就活生を見る度に心がざわつくので、今日も就職活動の話を書く。本当に申し訳ない。帰宅が遅かったのでホワアルはこれから視聴し、明日にまとめをあげる予定

 

 

 某英語試験を受けるため、朝早くから大学に来ていた。

試験を受け終え外に出ると、風が冷やりとして気持ちいい。胸いっぱいに息を吸い込むと、教室の中の淀んだ空気よりか幾分か新鮮な空気に少し気分が良くなる

キャンパスの中の大通りを通って南門へ。道は銀杏やその他の木の落ち葉で黄色に染まり、木々は時折寒そうに震える。大学構内は世間と隔離されたままかと思いきや、すっかり冬の風情だ。

 

と、向こうから何か黒づくめの集団がやって来る。談笑する者がいれば、1人目の前を見つめて真っ直ぐ歩く者もいたり、行動は十人十色でありながらも、皆同じ格好で同じ方向に進む者達。不気味だな

訝しみながら、彼らの波に逆らって進むと、大学創設者の銅像後ろに資料を配る大学関係者の姿。その姿を見て検討がついた

どうも、今日は就職活動を行う学生に向けた学内説明会の日で、キャンパス内の建物内で一斉に説明会を行っているらしい。そう言えば、去年のこの位の時期、私も人込みに怯えながらこの中に混じっていたな、と思い出す

 

 

 スーツを着て、なるべく多くの企業を回ろうと意気込みながら、大切な日曜日を朝早くから全て犠牲にした12月。

意味が無かった、とは思わないけれど、然りとて内定に繋がったともあまり思えない。


ただ、あの時は必死だったのだ。

景気が回復の兆しを見せてきたと言えど、自分が選ばれないのではないか、何者にもなれないのではないか。

それがとてつもなく不安で、企業の説明会に出ては、配られた用紙に兎に角名前を書いた。無理やり質問を考えて、人事や、説明会に呼ばれている内定者に話しかけもした


ボールペンも身に纏っているものも全て100均で揃えたもの。必死にメモした人事と内定者の名前や特徴もその後一度も見返さなかったのに。

今考えたら笑ってしまうような阿呆だ。人見知りの私の足掻きは、彼らにさぞ滑稽に映っただろう。

今なら笑ってしまうのに、あの時の私にはその滑稽さが分からなかった。

 

全ての現実は就活で、就活だけが現実だった。

就活に失敗した場合に、次があり得るなんて余裕は持ち得なかった。何より、数々の「選抜試験」を失敗してきた私にとって、選ばれない事の重みは耐え切れるだろうものではなかったから

しかし、現実の就活は、落とされたり次に進めたり、自分の意志がどれくらい介在するかも分からぬままあれよという間に動き、最終面接まで100均製品を身に纏ったまま終わりを迎えた。

そして、就職活動の間掲げていた「自分のやりたい事」が本当に自分のやりたい事なのかよく分からないまま今に至る

 

 

 だから私には黒服に身を包んだ彼らを笑えない、笑わない。

だが、協調性の著しく欠ける私から見て、その意気込んで、はたまた無意識のうちに黒に溶け込み、歩調さえ合わせてしまう様は非常に不気味ではある

 

彼らは唱える

やりたい事を見つけろ、自分にあった企業を目指せ。

 

やりたい事を持たず、とりあえず就職した先で目の前にある自分の求められた仕事をこなしながら出来れば好きなものを見つける。こういうスタンスではなぜ就職してはいけないの?

自分に合う環境なんてそこに入りもしないで分かるわけがないと人生で散々学んできたはずなのに、どうやって自分に合う企業を探すの?

この程度の疑問は少し考えればどんな人間でも思いつくはずだ

 

 

それでも、彼らが、我々が、その不気味さに自分を同化させるのは「企業が求めるから」、「大学が求めるから」だし、内なる他者の目が我々を責めるから。

信仰が、道徳が、常識が、普通が、友達が、真綿のように私達の首を絞める。早く大人になりなさい、この程度のこと位理解しなさい、当たり前でしょう? その苛立ちが、彼らの理解度の低さ故から来るものかもしれない事に彼らは気がつかない。同様に私達も気づかない。自身が自身に向けるものだとしても気づけない

その無知は言葉や経験から来るような生易しい断絶ではない。互いを理解できると思った瞬間に、我々の心、私と私の心は永遠に離れてしまったのだ。

 

そんな大きな遠い昔の思い込みが回りまわって、未だに就職活動という小さなイベントを支配していると考えると、恐ろしい。

立派な服を着て、それらしき言葉で着飾っても、所詮中身は毛皮を着て集団で生き物を狩り殺す時代から、我々は一歩も進化できていないのだろう

とりあえず、後輩も含めて今就職活動をしている子達には、身体と精神に気をつけて無事に帰ってきて欲しい。心からそう思う帰り道だった